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読切小説
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駅員さん顏射プレイ
「岡野。ポスター剥がされてる」
三浦さんに背中を小突かれて見上げると、
今朝貼ったばかりの『痴漢撲滅キャンペーン』のポスターが跡形もなくなっていた。
「予備あったよね。持っておいで」
「はい」
「ついでに灰皿も掃除しといて」
「はい」
駅員の仕事は多岐に渡る。気持ち良く駅を利用してもらうためには、清掃だって大切な仕事だ。
ポスターを取りに行って、灰皿を一通り点検していると、券売機の近くに人だかりが出来ていた。
赤毛の外人さんが、切符の買い方が分からないで、まごついている。
片言の英語で説明してあげると、オーケー、サンキューとニコッと笑って、
買った切符を僕に渡そうとする。慌てて自動改札に連れて行って、また説明。
「お降りの際には、お足下にご注意の上、お忘れ物のないよう・・・」
アナウンスをバックに、外人さんは手を振って、電車に乗り込んで行った。つられて僕も手を振ったら、
後ろからクスクス笑い声と「可愛い」というヒソヒソ声。
どうせガキみたいですよ、だ。童顔は親譲りだし、制服もまだ板についてないし、
仕事も出来ないし・・・・だめだめ。暗くなってちゃいけない。
僕はブルッと頭を振って、ポスターを抱えて三浦さんの所へ戻って行った。

「こんなんのどこがいいのかねえ」
三浦さんが、ポスターを貼りながらブツブツ言ってる。
一昨日から貼り出した、痴漢撲滅キャンペーンのポスターは、最近公開された映画がヒットして、
人気急上昇中の俳優がモデルで、とても人気があるせいで、貼っても貼っても剥がされてしまう。
もちろん、ポスター一枚で、痴漢がいなくなるだなんて、誰も思ってはいない。
特別相談室を設けたり、車内を見回りしたり、色々やっている。それでも中々減らない。
ポスターは、俳優が真直ぐ前を見て、優しい笑顔を浮かべている。
下に、手書きの文字で、「ぼくにも娘がいます」。
この手のポスターにありがちな、女性の体に伸びる手とか、勇気を出して告発する女の子とかじゃない。
あなたが悪いんですよとか、あなたが告発しなさいとか、
そんなおしつけがましさのない、いいポスターだと思う。
でも贅沢を言えば、「痴漢される男の子」の事も考えたポスターだったらもっと良かったのに。
だって痴漢されるのは女の子とは限らないし。
僕も、学生の頃は・・・ホントは今でも・・・痴漢に時々会うので、痴漢される側の気持ちは良く分かる。
知らない他人に、体をまさぐられる恐怖とおぞましさ。
ラッシュの時だったりすると、身動きも出来なくて、涙さえ滲んで来る。
どうして自分だけが、と思ったり、通勤の時間をずらしたり、車両を変えたり、
痴漢との闘いは、孤独な闘いだ。
最近は、女の子は、反撃する子も増えているらしいけど、
男としては、痴漢にあってるなんて、なかなか言えない。泣き寝入りするしかないことも多い。
「でも、このポスターで、痴漢が一人でも減ったらいいですよね」
僕が言うと、三浦さんがポンと僕の肩に手を置いた。
「そうだね。こっちはいいから、南口の方見ておいで。そろそろ混む時間だから」
「はい」

お昼頃に、忘れ物の連絡が入った。
「3両目か4両目の、東側の網棚。20センチ四方ぐらいのデパートの包み・・・・あった」
幸いにもすぐに見付かって、電車を降りようとした時に、一人の乗客と目が合った。
30代半ば位の、スーツを着たサラリーマン風。縁無し眼鏡が、嫌みじゃなくサマになってる。
どこかで見たような顔。何故か、僕をじっと見てる。
どこかで会ってる人だろうか。
駅の利用客なら、いつの間にか、顔なじみになって、知ってる人のように誤解する事もよくある。
町で見掛けて、つい挨拶してしまったり。
首を捻りながら電車を降りると、後ろからその人も降りて来た。
何となく見ていると、軽く会釈して階段を上って行った。
やっぱり、駅の利用客だったんだろうか。
「ありました」
先輩に報告して、またホームに戻る。

「痴漢です!この人!痴漢!」
女の人の声。被さるように、「違う!」と男の声。ホームがざわめきに包まれる。
注目の中、20代ぐらいの女の人2人が、電車から転げ落ちるように降りて来た。
先に降りて来た人は、顔を赤らめて俯いていて、後から降りて来た人は、男の人の背広の袖口を
しっかり掴んで、一緒に降ろそうとしてる。
「違う!誤解だ!」
背広の人が抵抗している。パッと振り向いた顔に僕はあれっと思った。さっきの乗客?
時計を見ると、さっきから1時間経っている。また、同じ電車に乗っていたんだろうか?
「他のお客様の御迷惑になりますから、こちらへ。岡野。後頼む」
「はい」
三浦さんの後を3人がついて行く。何となく見送っていたら、
一番後ろを歩いていた男の人が振り返って僕を見た。
ズキン。
なんだろう。
あの視線。
あの目を、僕は知ってる。
あの目で、見られた事がある。
いつ、どこで――?

「まいったなあ」
三浦さんが頭をかきながらやってきた。
「どうしたんですか」
「いや、さっきの子達に話を聞いてたら、『違うかも知れない』って言い出して」
顔を伏せていた女の子の方は、今月に入ってから、毎日のように、痴漢に会っていたのだと言う。
それで、見兼ねた友達が、一緒に通勤してあげるようになっていたのだそうだ。
それで今日、また痴漢された彼女を見て、友達が逆上して、
その時一番近くにいた男の人を捕まえたらしい。
「決め手がないんだよね」
三浦さんがフゥーと溜め息をつく。
「男性は、一貫して否定してる。被害者の子は、痴漢の顔を見ていないんだけど、
手の甲で、お尻を撫でられた時に、固い物が当たったって言うんだよ。多分、指輪だと思うって」
そしたら、あの男の人がムッとして、それなら、所持品検査をしてくれと言ったらしい。
所持品といっても、アタッシェ一つしか持っていなくて、指輪はしてなかったし、
持ち物からも、それらしい物は出て来なかった。
「証拠はないし、人違いなのかどうかも分からない。
顔を見てるわけじゃないし、彼が否定してる以上、真相は闇の中だよ」
難しいなあと三浦さんは言って、どっさりと椅子に倒れ込むように座った。

休みの日。夕方になってから、久し振りに映画でも見ようと思い立った。
映画館は、冷房が効いてるかもしれないので、薄手のジャケットを持って、
早めの晩御飯を食べてから家を出た。
仕事場でもある駅に、今日は利用客として立っている。利用者の目で、ホームを見る。
急行は通過してしまう、小さな駅。今の時間帯は、11分置きに電車が来る。
アナウンスが聞き取りにくいのは、スピーカーが古いせいで雑音が入るから。
でも、駅員達は、忙しく立ち働いている。全体に老朽化してるけど、
清潔で、働いてる人達も、にこやかで活き活きしてて、いい駅だと思う。
痴漢撲滅のポスターが、また剥がされていた。
小豆色のボディーの電車に乗って、5分ぐらい経った頃に、斜め前の男の人に目が行った。
なんだか、様子がおかしい。乗降口の脇の手すりに体を凭れさせて、顔を赤くして、呼吸が乱れてる。
気分でも悪いんだろうか。
そう思っていると、その男の人が、身を震わせた。くっと唇を噛む。
――痴漢?
そっと、彼に近付く。背は高いけど、優しい女顔。腰も細くて、痴漢に狙われてもおかしくない。
「大丈夫ですか?」
囁くように声を掛ける。ビクッとして、僕を見る。目が濡れていた。
「あ・・・」
なにか言おうとして、ひゅっと息を飲む。
「気分悪いんですか?降りて、ちょっと休んだらどうですか」
さりげなく、彼を庇うように立って、周りを見回す。
「えっ」
彼のちょうど後ろに、この間の、縁無し眼鏡の男の人が立っていた。

次の駅で降りて、ベンチに彼を座らせる。
痴漢されてたんですか、とは聞けないから、気分が悪くなった人にしてあげるように、
自販機でジュースを買って、渡して、暫くついててあげた。
彼は、ものすごく申し訳ながってたけど、僕は、彼の面倒を見ながら、別の事を考えてた。
さっきの男の人。
誰だろう。
やっぱり、あの人は、痴漢なんだろうか。

映画を見る気分じゃなかったので、そのまま家に帰った。
結局着なかったジャケットのポケットに、何かが入っていた。
メモの切れ端。

   『明日PM7:13 3両目』

7時13分の電車。この間と同じ時間だ。あの時、3両目の、前から2番目の乗降口から、
あの女の人達が降りて来た。縁無し眼鏡の男の人の袖を掴んで。
来い、という意味だろうか。
危険信号。
行ってはいけない。
なにか、理由をつけて。
トイレ掃除でもなんでもいいから。
その時間に、3両目近辺に、いないように。

「待たせたね」
縁無し眼鏡の人は、僕を見ると、旧知の友人にするみたいに、親し気な笑顔を見せた。
7時13分。3両目の前から2番目の乗降口。
僕は、でくの坊みたいに突っ立ってた。
僕がいない可能性なんて、考えてなかったみたいに、当然の顔をして、降り立った。
スーツ姿の彼と、それからもう1人。
よく知ってる顔だった。
ポケットに手を突っ込んで、三白眼で僕を見てる、柄の悪そうな、若い男。
右手の中指に、シルバーの大きな指輪。
「駆け込み乗車は、危険です・・・・」
アナウンスが遠い。

邪魔の入らない所はどこ?
そう聞かれて、僕はのろのろと駅員室に向かった。屠殺場に連れて行かれる家畜のように。
これから僕は、殺される。
「1度や2度なら、偶然で済ませられるけど、3度目に君が私を見た時に、思ったんだ。
運命だったんだ、ってね」

「覚えてる?」
ぼおっと見上げる僕に、彼は笑いかけた。僕の・・・・に、指を絡めながら。
「今でもココがイイの?」
なにを言われてるのか分からない。でも体は覚えてた。
昔から、何度も痴漢に会っている内に、覚えてしまった箇所。
それに気付いた痴漢達が、狙い済ましたみたいに触れて来る箇所がある。
そこに触られると、立っていられないぐらい、ビクビク震えてしまう。
最初は、服の上から。
それから、ボタンをかいくぐって、素肌に。
「・・・ぁ」
羽交い締めにされてる。三白眼の男に。
でも、拘束されてなくても、もう僕は、動けない。
眼鏡の奥の目。
いつも、僕が痴漢されてる時に、どこかから、僕を見てた。
いつも僕を痴漢してた男。三白眼の男。彼を見つける度に僕は逃げて、でも逃げられない時もあった。
そんな時、僕は罠にかかった動物みたいに、じっとしてた。
じっとして、ただその時が過ぎるのを待っていた。
そして僕は、痴漢の手には感じなかったけど、彼の視線に感じてた。
痴漢の手に追い立てられながら、僕を犯してるのは、いつでも彼だった。
「君の勤務してる駅は優秀でね。仲間内では有名なんだよ。他の駅じゃ、痴漢撲滅なんて口先だけさ。
それが、君の所では、駅員も定期的に見回りに来るし、やりにくいってね。一度、君の駅の連中の
鼻を明かしてやりたいって、皆言ってたんだよ」
答えは、喘ぎにしかならない。彼の手に、触手みたいに絡め取られて。
僕が反応する所を、繰り返し、繰り返し、探って来る。後ろからは、僕を戒めている三白眼の男が、
項を舐めて、耳の下にキスをして、首筋に歯を立てる。
「仲間に言われて、偵察に来たら、君が働いてるじゃないか。驚いたよ。学生時代、
いつも真っ赤になって、動けないで、痴漢の手に可愛いぐらいに敏感に感じていたのにね。
やっぱり、痴漢されてる経験があるから、撲滅キャンペーンにも、身が入っていたのかな?」
きゅっと握られて、高い声が上がる。いやだ。こんな自分。
いやなのに。
いやなのに、どうして。
ボタンがはずされる。制服の前をはだけられて、汗ばんだ素肌を、乾いた手に撫で回される。
いやなのに。
ズボンが降ろされて、膝でわだかまってる。2人の男は服を着たままで、僕だけが、こんな恰好で。
「鍵を・・・っう」
乳首を舐められて、息を飲む。
「鍵がどうかした?」
鍵のかかっていない駅員室。いつ、だれが来るかも分からない。
「鍵、かけ・・あ、いやっ」
尻の狭間に、固い物が押しあてられる。若い男の、・・・指?
逃げようとすると、剥き出しの性器を、彼に向かって突き出す恰好になってしまう。
「鍵をかけて欲しいの?だれにも邪魔されないで、存分に楽しみたい?」
ちがう。そんなんじゃない。言葉にならないで、首を振っていやいやをする。
「どっちがいいの?見られたい?いいよ。私達は見られても。恥ずかしいのは君だけだからね。
痴漢呼ばわりされて、駅員室に連れ込まれて、淫乱な駅員さんに、誘惑されましたって
言うだけだから。仮性包茎の駅員さんが、ビンビンに勃起させて、こんなにヌルヌルにしちゃって、
しごいてくださいって、おねだりされましたって」
裏筋を辿られて。のけぞった上半身に、僕自身の先走りをなすりつけられる。
「ベトベトになりながら、目を潤ませて、おねだりされましたって。他の駅員さん、呼んで来ようか」
「やめて・・・やめて下さい。鍵を」
「鍵を掛けて欲しい?」
「っ・・・・はい」
「邪魔されたくない?だれにも邪魔されないで、思う存分楽しみたい?」
「・・・っゃあっ」
答えられないでいると、うしろに指が潜り込んで来た。なにか塗られているのか、きついのに、
ズルリと入り込む。
「どっちなの?見られたい?見られたくない?」
「みっ・・見られたく、ない、です」
だから鍵を掛けて下さい。邪魔されたくないです。邪魔されないで思う存分感じたい。
体中を苛まれながら、途切れ途切れに嘆願する。その間も指は奥にまで入り込んで、蠢く。
体の芯の、どこか深い所に戦慄が走る。
「いいよ。淫乱な駅員さんが、気を散らせないで楽しめるように、鍵を掛けてあげよう。
私達を満足させてくれたらね」

背後の男に、羽交い締めにされていた腕を解かれると同時に、彼に手を引かれて倒れ込む。
彼に抱かれて、崩れるように倒れる。固い床。後ろの指がズルリと抜けた。
その感触に戦いて、彼の胸に顔を擦りつけてしまう。
彼が眼鏡をはずした。こんなことをするようには見えない、きれいに澄んだ瞳。哀しいくらいに優しい。
口付けられて、僕は自然に目を閉じていた。指が抜かれた後の所に、もう一度なにかが入って来る。
指より太く、抵抗の大きいもの。口付けが深くなる。奥に、押し込まれる。舌が。
体のどこでなにが起きているのか、段々混乱してくる。気持ちいい。性感だけが煽られて、
段々その事しか考えられなくなる。
いつの間にか、彼に縋り付いていた両手が、そっと解かれる。柔らかい感触。布が巻かれている。
「傷はつけないから」
口付けの合間に彼が言う。幼子を諭すように、優しく。
膝を折らされて、手首に巻かれた包帯が、足首にも巻き付けられる。そしてもう片方も。
だのに。両手を拘束されているのに、なぜか、縛られているのではなく、
抱かれているような安心感に包まれる。
顔を上げさせられる。彼が身を引く。
うしろから、男に尻を持ち上げられて、彼に向かって、跪く体勢になる。
目の前に、彼の腹。
「なにをすればいいか、分かってるね?」
カチ、と後ろで軽い音。それと同時に体に衝撃が走った。
「いやああっ」
モーター音と共に、強い振動が送り込まれる。のけぞって体を逸らし、逃げようとしても、
体内の奥深くに埋め込まれたものは、出て入ってくれない。体の芯から揺すぶられるような衝撃。
「勃ててやがる」
その時、それまで黙ってた若い男が、面白そうに口を開いた。
「いかせないように、握っててやって。ほら、早く。鍵を閉めて欲しいんでしょ」
彼の指示に、男の手が、きつく僕のを握り締める。彼が、僕の顔を自分の下半身に押し付ける。
「早く。ジッパー降ろして」
唇に指が添えられる。ジッパーが歯にあたってカチカチ鳴った。体がブルブル震える。腰の中で、
振動を続けるオモチャが、時々あたる所があって、ビクッ、ビクッと体がのけぞる。
必死になって、ジッパーを銜えて引き降ろす。でも、張り詰めた性器は、下着に阻まれて出て来れない。
彼が手を添えて、出て来たもので、僕の唇を突く。
「咬んじゃ駄目だよ」
反射的に顔を背けたら、バイブレーターの振動が大きくなった。あっと叫んだ口に、彼のが突き込まれる。
後ろでは、叩き付けるような動きのバイブレーターを、勢い良く抜かれ、また、ぐぬり、と入り込んで来る。
僕のものは、戒められながらも、ボタ、ボタと雫を漏らしている。
太股が引き攣って、腹が波打って、拘束された両手は、きつく握り締め過ぎて、拳が白くなっている。
助けて下さい。
もう堪忍して下さい。
許しを乞いたくても、口一杯に頬張らされて、喋る事もできない。喉の奥を突かれて、
生理的な反射で押し返そうとする喉の動きと、締め付ける舌が気持ちいいらしくて、何回も繰り返される。
涙が滲んで、溢れて、頬を伝う。
「上手だね。慣れてるの?」
嘘だ。他人のを銜えたことなんてない。
答えられもせずに、僕は、ただこの時間が終わるのを待っていた。
「そろそろ、出すよ。飲んで」
言葉と同時に、彼のが、更に大きくなった。
本能的な恐怖に、バッと口から離してしまった。
でも、間に合わなくて、口の中で発射を始めてしまったものが、ドロリと糸を引いて顔にかかった。
彼は、僕の後頭部をがっしり掴むと、空いた手でまだビクビクしてる自分のを扱いて、
更に何度か、僕に浴びせかけた。
ヌルリとしたものが、鼻の脇から伝い落ちる。気持ちが悪いけれど、逃げられなくて、ジッとしていた。
「悪い子だね」
彼が、嬉しそうに言った。
「満足させてって言ったのに、飲むこともできないの?こんなんじゃ、鍵なんか掛けてあげられないね。
それとも、顔にかけてほしかったの?しょうがないね。言う事もちゃんと聞けない淫乱な駅員さんは、
皆で、躾け直してあげよう」
彼の言葉の意味を理解するより先に、ドアがガチャと開いた。ハッと振り返る。
「あ・・・いやあああ!」
4〜5人の男達が、ニヤニヤ笑いながら入って来た。
「大丈夫だよ。彼らはみんな私達の仲間だ。他言したりはしないよ。君がどんなに男好きで、
淫乱で、我慢のきかない駅員さんか、言いふらすような奴はいないから。だから、好きなだけ、
乱れていいんだよ。人数が足りなかったら、いつでも、もっと呼べるからね」

「ほら、もっと腰を使え」
横になった男の上に跨がらせられて、尻を叩かれる。両手は両足に繋がれたままの、不自然な体勢で、
バランスが取れないで、倒れそうになる。その度に、尻を叩かれ、乳首に付けられたクリップを弾かれる。
痛みは増幅して、いつの間にか、感覚が混乱して、痛いはずが、痺れに似た感覚になっている。
口から漏れるのは、苦痛を訴える悲鳴じゃなく、甘さを帯びたうめきだ。
射精を塞き止めていた手は、促す動きに変わっていて、何度も絞り取られた。もう駄目、もう出ないと
訴えても、手は止めて貰えず、ヒリヒリとするばかりのものを、しごき立てられる。
体は、発火したみたいに熱い。熱は治まるどころか、より熱く、苦しくなる。
犬みたいに、口を大きく開けて、ハアハアと呼吸をする。喘ぎ声も、もう音になっていない。
「もっと絞めろ・・・そうだ。いいぞ」
僕の様子になんか、おかまいなしに、男達は僕の肌をまさぐり、腰を抱き、猛るものを突き立てる。
熱い僕の体に煽られて、同じように熱くなっている男達の体。
そんな中で、一人だけ冷静に、冷たい指で僕の首を撫でている、彼。
一人だけ、欲情を露にしない、冷たい目で、僕を見ている。
あの、時みたいに。
僕が痴漢されていたのを、ジッと見詰めていた時みたいに。
あの、目。
体中を撫で回す手より、なにより、僕を感じさせる。
「は・・・あああっ」

「顔色が悪いな。岡野。大丈夫か」
「すみません」
「こっちはいいから、休んでおいで」
三浦さんに送られて、トイレに向かう。
休む為ではなく。
「遅いぞ」
トイレには、もう3人、待ち構えていた。
「申し訳ありません・・・・」
「ちゃんとしてきてるだろうな」
「・・・はい」
「見せろ」
唇を噛み締めながら、服の前をあける。
制服の下には、縄目が走っている。体中を拘束用の縄で縛られ、感じる所を刺激するように、
ゴツゴツした結び目が、あちこちに、施されている。
あの時、朦朧とする意識の中、奴隷誓約書を書かされた。
いつでも、痴漢達の望む時に、痴漢達の好きな場所で、好きにさせること。
奴隷の印に、ペニスにピアスを穿たれた。
最後の一滴まで搾り取られた後のものをつまんで、首輪の代わりだよと言って、彼は笑った。
尿道に薬を注入しながら。痛くないからねと言って、優しく、この上なく優しく笑った。
穴を塞いでしまうとね、おしっこする時に飛び散るから、女の子みたいに座ってするんだよ。
そう言いながら、僕の前にポラロイドをちらつかせた。
綺麗に取れてるから、一枚あげる。
ビデオもね。今度、ダビングしてあげるよ。
「ケツはどうだ。慣らしてあるか」
「・・はい・・・」
「聞こえないぞ。どうなってるんだ」
「・・いやらしい、僕の穴は、御主人様のものが・・・すぐに、入れ、られるように・・・
栓をして、慣らしてあります。いつ、でも・・・お使い、頂けます」
言いながら、ズボンを降ろして、四つん這いになって、穴を塞いでいる、黒い大きなものを見せる。
痴漢達の視線が、僕を拘束する。
もう、逃げられない。
痴漢達が僕を撫で回す。小さな声が漏れる。体が、イヤなのに反応してしまう。
痴漢達が笑う。
「ずいぶん熟れてきて、いい体になってきたな。ここに来ればお前がいると思うと、
その辺の自意識過剰な女なんぞ、手を出そうって気がなくなっちまうよ」

「痴漢撲滅キャンペーン」のポスターが、また剥がされていた。
三浦は、舌打ちをして、新しいのを取りに駅員室に向かう。
後輩の岡野は、この所元気がない。ただでさえ、少女めいた顔だちが、憂いを帯びて、
その気のない筈の三浦でさえ、時々ドキッとすることがある。
「また、ポスター取られたのか」
同僚が声を掛けて来た。苦笑して頷く。
「ああ。切りがないな」
「しかし、効果は上がってるらしいぜ」
「へえ」
「ここんとこ、この路線での痴漢出没率がグンと落ちてるんだってさ。それも、どうやら、
ちょうど、このポスターが貼り出された頃からだって。
こんなニヤケ俳優でも、宣伝効果はあるのかね。何にせよ、偉いさん方は喜んでるよ」
「ポスター一枚で痴漢が消えりゃ、苦労はないよな」
「全くだ。んなもの、俺等ヒラの駅員の、地道な努力が効果を上げてんだっての。
好感度ナンバー1タレントだか何だか知らないが、うちの駅だって、利用客の好感度ナンバー1だぜ。
駅員のサービスがいいってさ」
「まあまあ。俺達の仕事は、所詮裏方だからさ。人の目につかない所で、
どれだけ丁寧な仕事が出来て、どれだけお客様に満足して頂けるか、なんだから」
11/07/16 19:57更新 / blueblack

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