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読切小説
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ムッツリ軍人×皮肉屋軍師
拭っても拭っても滴り落ちる汗。今にも発火しそうな程熱を持った自分の呼気。
夜と言うのに一向に下がらない気温は容赦なく体力を奪って行く。
弾丸の尽きた小銃は既に打ち捨てられ、
唯一残された武器の刀剣も血に塗れて鈍になってしまっている。
このまま捕虜になってしまえば楽になれる・・・

切り捨てられたな。
誰も表立っては言わないが周知の事実だ。
再三の応援の要請にも応えがないとか。
そもそもこの島の上陸作戦の指揮を取っているのが、
軍部で権力争いに敗れた挙げ句報復で配属されたのだと
仲間内では噂されている、。

白兵戦と言えば聞こえはいいが、
要は人間以外に投入出来る物資がない負け戦だ。
それも寄せ集めの、昨日まで商店街の親父だったような連中を集めての。
彼自身、小さな料理屋の主人だった。10代の時に父親が倒れ
学校を辞めて後を継いでから20年以上その道一筋だった。
それが料理包丁を刀剣に持ち替え、闇に乗じて背後から忍び寄り、
鶏や豚を捌く代わりに人間の腹や咽を突く。
この戦が終わって生きていたら、
故郷に帰れたら、この手で妻や子を抱くのだろうか・・・
この、血で汚れた手で・・・?
鬱々と考え事に耽っていた彼の視界に何かが過った。
敵か?思わず身構える。
人影は彼の眼前数メートルの所をフラフラ歩いている。
よく見えないが怪我をしている様だ。
敵か?味方か?
近付くべきか、このまま茂みに身を潜めているべきか。
無意識の内に握り締めていた拳を開いた時
眼前の陰がガクリと膝をつき倒れた。

考える前に駆け寄っていた。
肩に手をかけて仰向かせ抱き起こす。
顔を覗き込み、彼は言葉を失った。
彼の腕の中にいたのは、こんな所にいるはずのない人物。
この作戦の総指揮者だったのだ。
戸惑いは一瞬だった。
そっと抱き上げ、辺りに気を配りながら移動する。
苦し気に呼吸を荒くしている男の体は余りにも軽い。
水場ーーといっても泥水だがーーに運び横たえる。
衣服を緩めようと伸ばした手が弱々しい抵抗に遭った。
しかしそれを不審に思う暇も無く襟ボタンを外して彼は手を止めた。
チラリと覗いた鎖骨に生々しい傷跡が残されていたのだ。
見れば手首にも鬱血がある。そう、丁度縛られた縄の痕の様な。
「水・・・」掠れ声に彼は我に返った。片手で生温い水を掬い飲ませる。
彼の手から水を飲む。時折歯や舌が手の平に当たる。
その度に彼の身体をゾクリと震えが駆け登る。

この細い首に手を回してほんの僅か力を入れるだけで
この男は死んでしまうだろう。
自分の手の中にやっと捕らえた生き物を
捻り潰してしまう子供の様な破壊衝動が彼を襲った。

しかし彼は「大丈夫ですか」と声を掛けてまた水を飲ませた。
ピチャ、ピチャ・・・微かな音が響く。
男が満足した様に溜め息を吐く。
そして始めて彼の顔を見た。
「お前か・・・・脱走したのではなかったのか」そしてニヤリと笑う。
彼は答えずに上官の襟を掴み上げた。挑戦的な眼。
「今朝方本部から最後の通信が入った。X国軍人として誇りを持ち徹底抗戦せよ」
スッと背中を冷たい物が流れた。
「最後の1人が倒れるまで1秒でも長く持ち堪えよとの命・・・・何をするっ、離せ」
上官の言葉を彼は聞いていなかった。上着を引き剥ぐ。ボタンが飛ぶ。
華奢な上半身が露になる。身を捩ろうとする白い肌を地面に押さえつける。
闇に白く浮き上がる身体のあちこちに痛々しい傷跡があった。
ジッと見詰める彼を睨み返す上官の双眸にはまだ力が宿っている。
捕虜になって脱走したのかと最初思ったのだが、しかし。
「今更戻っても誰も残ってはいない。誇りあるX国軍人など一人もいなかったのだ。
尤も寄せ集めの軍隊に誇り等持てよう筈もないが。
最後の1人どころか最初の1人が寝返った。お前も。ここで私を見付けたのは
幸運だったな。私の身柄を手土産に投降する位がお前等には似合いだ。
それなら生きて還れるかもしれんぞ。奴等からは何とか逃げ遂せたが・・・・
今の私にはお前に抵抗する力はない」
つい昨日まで味方だった、いや部下だった筈の男達に付けられた傷を
晒して上官は薄ら笑いを浮かべる。白い肌に絡み付く様に赤黒い傷跡が
何本も走っている姿は余りにも扇情的だった。

彼の手が上官の腰に伸びた。
「な、何のつもりだ!」
片手で抗いを封じ込め、片手でベルトを抜く。ズボンを剥いで下着の中に手を入れる。
「お前、何・・あっ」
「シッ」
ガサリと音がして二人は身を固くした。
追っ手なのか。それとも敵か。どちらであっても見付かる訳に行かない。
茂みの向こうを、二人組らしい人影が歩いている。
人影が見えなくなるのを待って彼は下着の中の手を動かした。
上官がヒッと悲鳴を上げるのに構わず後ろを探る。
ヌルリとした感触が何なのかは見なくても分かった。
ただ裏切られ敵軍に引き渡されそうになっただけでない。
その前に恐らくは数人掛かりで行われた陵辱の名残りが華奢な身体に残っていた。

「やめろ、やめっ・・あ、痛っ」
「静かにして下さい。戻って来るかもしれません」
「勝手な事を・・・・ンッ」
「締めないで」
赤く充血した箇所に指を押し込み、中のものを掻き出す。
後から後からドロリとした液体が流れ落ちる。
つい先刻まで皮肉な笑みを浮かべていた顔は紅潮し、目尻に涙が浮かんでいる。
「切れていないようですね」
満身創痍だがその箇所は見た所出血は無い。
ハアハアと息を荒気る上官を哀れに思う。そうさせているのは彼なのに。
高く、細い悲鳴が上がる・・・・力を入れ過ぎた様だ。
ブルブル震えて前も張り詰めている。
「切れてなくてよかった。ここには消毒薬がありませんから」
手を休めずに声を掛ける。聞こえているのかいないのか。
前からポタポタと雫が落ちる。必要以上に後ろを弄っている所為で。
けれど止めてやる気になれない。何人の男に嬲られたのか。
そいつ等がしたのよりもっと酷い事をしてやりたい。
自分の事しか思い出せなくなる位してやりたい。
「ああ・・もう、あ・・・」
地面を引っ掻いていた手がギュッと握り締められる。
「・・・・シンっ」

「・・いつ気付いたんですか」
「敬語は止めろ。初日だ。お前こそ何も言わなかったじゃないか」
「忘れられてると思ったから・・」
「ふん。幼年学校時代の仲間を忘れるような薄情者に見えるか。
・・・退学した切り音信不通の薄情者と戦場で再会するとは思わなかったが」
「俺だって・・会えるとは思わなかった」
「ああ。再会を喜ぶ訳に行かなかったしな。周りには敵しかいなかったから
下手に知っているとも言えなくて・・・・所で」

「これからどうする?」
旧友が不敵な笑みを浮かべた。シンも笑って答える。
「もちろん生きて帰るさ。お前もだろう?」
「そうだな。必ず生きて帰って俺をこんな目に遇わせた奴等に
タップリお返ししてやる。協力してくれるな?」
11/07/13 13:33更新 / blueblack

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