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連載小説
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再会
 職場のマシンに禾耶からコールがあった。

 「手術は成功しました」

 最後に会ったのは手術のひと月まえで、そ
のときに、来玖からはコール入れないでね、
待っててねと禾耶は私の手をにぎりしめた。
だから私は禾耶のナンバーを削除した。

 アプレの子は例外なく弱い。禾耶も死なな
いでいるのが奇跡だと言われていたくらいに
虚弱な子だった。学校にもろくに行かれず、
禾耶が十のときに私が家庭教師として雇われ
た。
 禾耶がいつ同意書にサインしたのか、私は
知らない。

 「成功率はまだ低いんだけど」
 さいごに会ったとき、禾耶は言った。
 「もし、うまくいったら禾耶と結婚してく
れる?」
 「いいよ」

 じゃあキスして、と言われてキスして、細
い体を抱いてやった。手術が成功したらコー
ルするから待っててね。そう言われて、私は
待っていた。



 長い髪をたばねた女性がベッドの上で半身
をおこしていて、その背を禾耶のおじさんが
ささえていた。
 「禾耶です」
とおじさんは言った。

 「まだ目が見えていないんです」
 おじさんが椅子をすすめてくれながら、し
ばらくかかるという話です、とつぶやいた。
新しいボディになじむまで。
 禾耶は十四歳だったけれど、ボディは私と
かわらない歳ごろに見えた。彼女が人間では
ないことが一目でわかるように眉間に埋めこ
まれている識別プレートはよくある銀色のタ
イプで、ただ、一般の機械人形には割りあて
られることのないゼロナンバーが刻まれてい
る。

 「禾耶」
 声をかけると、彼女がゆっくりとこちらを
向いた。
 きれいなボディだ。くちびるは赤く、ひざ
においている両手の指の、切りそろえられた
爪につやがあった。禾耶は薬のために髪がご
っそり抜けていたし、爪も白っぽくて肌もか
さついていた。
 からっぽの生体人形は、とてもきれいだっ
た。目も見えていず、口もきけない。
 おじさんが二通の封筒をもってきた。この
人形の権利書と、それから私にこの人形を譲
ると書かれた、禾耶の遺書。
 人工生体――ゼロナンバーの開発ははじまっ
たばかりで、人間の移植手術に至っては症例
がやっと三桁になったところだった。私のマ
シンにコールを入れた禾耶は、現行法では死
亡扱いになっている。
 「リハビリは来週からの予定です」
 リハビリがはじまれば、やがて禾耶がボディ
になじんで、私を見て、私の名を呼ぶように
なる。
 来玖、と。
 そうしたら禾耶に、この指に合うサイズの
指輪を買ってやろう。
11/07/14 00:21更新 / blueblack
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