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本庁のエリート警部×所轄の平刑事

情報提供者はまだ来ない。

苅田はザラつく顎を撫でながら空のグラスをボンヤリ見つめる。
ここ毛名町で1週間前に発砲事件があった。
その拳銃の出所を知っていると言う匿名電話が指定したのがこの店だ。
男ばかり集う怪し気な店。
(裏で売春辺りさせてそうな雰囲気だ)
先刻から色目を使っている茶髪の男がいる。
最初は情報提供者かと思ったが、
電話では髪を赤く染めていると言っていた。
匿名のタレコミは殆どガセだがだからと言って無視する訳には行かない。

バーテンがジロジロ見ている。
私服だと刑事に見えないから無理もない。
苅田はれっきとした御前署刑事課の所属だが
目付きが悪くて犯人に手錠をかけてもどっちが捕まった方か
分からないなどと言われる始末だ。

「お代わり」
水割りの氷が解けるのを待っていると、覚えのある声が背後からした。
「待たせて済みません」
涼やかな香りと共に隣に座った相手は
「飲めないクセに」
とグラスを見て鼻で笑った。
「どうしてお前がここにいるんだ」
低く唸る様に言うと相手も声を低めて答えた。
「それは私のセリフです。単独行動は慎めと言われませんでしたか。
一匹狼を気取るのもいい加減にして下さい」
この男───常葉は本庁の警部だ。所謂キャリア組で、
苅田達叩き上げ組にして見ればロクに現場を知らないで
自分達のやり方を押し付けようとする煩いエリート様。
大方苅田の行動を批判しに来たんだろう。
この男は何かと苅田のやり方にケチを付ける。

「うるさい!」
ガタッと椅子を揺らして立ち上がった腕を常葉が掴む。
「飲めない酒を無理に頼む程待たせたのは悪かったから。
拗ねないで」
「誰が拗ねて───う、ンッ」
言い掛けた唇が唇で塞がれた。目を白黒させる苅田を嘲笑する様に
常葉は見せ付ける様にイヤらしく角度を変えながら
キスを続ける。同時に片手で掌を軽くくすぐられ背中に
妖しい戦慄が走る。咎めたくて唇が離れた瞬間(やめろ)と
叫ぼうとするが口を開いた所に舌が入り込む。
痺れにも似た疼きが身体を焼く。
(おかしい、おかしい。何故こいつの、こんな───)

永遠にも思える長いキスは唐突に終わった。
「ごめん。感じた?」
意地悪い笑みを浮かべて常盤が耳に口を付けんばかりに囁く。
しかしそれはバーテンダーに聴かせる為にわざとらしく大きい。
常葉の手が腰を抱く。そんな動きにも疼きが掻き立てられて、
苅田は立っていられなくなった。
そんな苅田の手を引いて常盤がトイレに向かう。
個室に苅田を押し込んで自分も後から入って来てロックをかける。
「何のつもりだ───」
「何だって、決まってるでしょう。こんな狭い所に2人で入る理由なんて、」
イヤらしい笑み。
「他にないでしょう」
またキスが襲う。自分から仕掛けるキスしか知らない苅田に取って
タイミングの掴めない常葉のキスは刺激が強すぎる。
頭がボーッとして抵抗する気持ちが吸い取られて行く。
カチャカチャと音がするのはズボンのベルト。
急激にスッと足が冷える。ズボンが下ろされたのだ。
「やめろ…」
抵抗は形ばかりだ。常葉の真意が掴めない。
苅田は息を飲んだ。
下着の中に常葉の手が入って来たのだ。
必死に声を押さえようとするのに常葉はわざと声を上げさせたいように
強い刺激を与える。
自然に息が荒くなってしまう。
(何をやってるんだ俺は。こんな場所でこんな男と。)
必死で考えをまとめようとするが、
追い立てられて声を上げない様にするのが精一杯だ。

ビクビクっと身体が跳ねた。
立ったままされたので、膝がガクガク震えてる。
その震えが全身に回ったのは常葉が塗れた指を後孔に回した時だった。
「よせ、お前、や、やめろ…っ、ああっ、」
懇願は聞き届けられなかった。

「一丁寄事件の判決が出たでしょう」
囁き声で常葉が言う。
苅田が犯人を挙げた最初の事件だ。それが何の関係があると言うのか。
一度極めた後、揺すぶられながら苅田はボンヤリと聴いていた。
もう声を押さえる気力もない。突き上げの度に情けない声が漏れる。
自分の物ではないような、甘さを帯びた、ねだるような声。
対照的に冷静な常葉の潜めた声。
「情報提供者とやらは、犯人の息子ですよ。
逆恨みであなたを刺そうとしていた。
バーテンもグルです。このバーで、一人で飲んでいる男をチェックしてた。
ここにも盗聴器があるかもしれない。
だからこういう方法を取るしかなかった」
「…それなら、…あっ、あ、はあっ」
「それなら、何ですか?」
「や、そこは、ああっ」
「ここ?」
グイっと突き上げられて嬌声が迸る。
膝は震え、振り乱した髪から汗が散る。
常葉は一旦突き上げを休めると、今度は奥深く納めたまま、
回す様に刺激して来た。
一番感じる所に擦り付けられて、堪らない感覚が襲う。

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