「はいはい、踊り子さんには手を触れないで下さいね〜」
ワザと煽るようなナレーションに男共の口笛と女共の黄色い声が飛ぶ。
マイクを握った熊男こと青田晴彦が急ごしらえのステージに視線を走らせ叫ぶ。
「あっこら光野触んなってっだろーが」
酒の勢いを借りてステージに登ろうとした男の襟首を掴んで引き摺り下ろす。
場を仕切ってる晴彦を怨めしげにステージから見つめる一対の目。
そんな事お高「無しに晴彦は更に煽る。客席から野次が飛ぶ。
「秀樹、もっと腰振れ!」
「秀子ちゃ〜ん、カワイイ〜ひゅ〜ひゅ〜」
ステージの上でパンツ一丁の姿を晒している哀れな小羊の名は武藤秀樹。
本来なら庇ってくれるべき恋人は、上半身だけ裸になっているが、
すっかり司会者気取りで、
「さて、次なる挑戦者は!」なんぞと叫んでいる。
「武藤君お肌スベスベ〜」
「ムダ毛処理してるんじゃないの?」
女共の心無い言葉に秀樹はカッと赤面した。
下着の中まで視姦されているような気になる。
「よっしゃ、お姫様の最後の一枚、俺がもらった!」
一際通る声を上げた男に座が沸き返る。
「よっしゃいけ木村!」
「ひん剥いちゃえ!」
そう、彼らは年越し野球拳に興じているのであった。
但し、勝ち抜きならぬ負け抜きである。
アウト!セーフ!一同が声を揃える。
ヨヨイのヨイ!の掛け声と共に、両者が拳を突き出す。
2度3度とあいこが続き、畢竟テンションが上がる。
そして決着は。
秀樹がチョキで相手がパー。
「た、助かった・・・」
ヘナヘナとへたり込む秀樹にブーイング。
「ちぇっ、秀子ちゃんのオールヌード見そこねた〜」
「一番の奇麗処なのに〜。木村の胸毛なんか見たくない〜」
騒ぎをよそに、秀樹より一回りガタイのいい男が上着を脱ぐ。
その陰から、こそこそとステージをおりる秀樹の腕をガシッと掴む腕。
そのまま有無を言わせず引き摺られる。
「ちょ、ちょっと、晴彦。どこ行くの」
「台所だよ。食いモン補充」
「えっその前に服着せて、服」
「馬鹿。負けた奴は年越すまでそのカッコなんだよ。
しっかしお前ジャンケン弱いな。とっとと勝って降りてくりゃいーのに」
「仕方ないだろ、好きで負けたわけじゃない」
ムッとする秀樹に晴彦が意地悪い笑みを見せる。
「そうかあ?俺はてっきりお前があそこで御開帳に及ぶつもりかと思ってたよ。
1回なんか後出しで負けてたじゃねーか」
「あっあれは!」
上がり症でパニック体質の秀樹は、物凄い勢いでチョキを出された時に、
あわあわして握っていた手を開いてしまったのだ。
あれがなければ上着を脱いだだけで解放されたのに・・・
言い返せないで赤くなっている秀樹を引き寄せて、
晴彦は冷蔵庫の陰に潜む。細い体を抱き締めて囁く。
胸毛と言わず腹毛と言わず、モジャモジャの毛が擦れてくすぐったい。
それを心地良いと思うようになってしまった自分が秀樹には信じられない。
「いっそのこと皆に見せてやりゃよかったよな。
お前の赤ちゃんみたいなキレーなお肌をさ」
ゴツゴツした手があらぬ所を探る。ヒッと息を飲んで秀樹が晴彦の腕の中で藻掻く。
「や、やめっ」
「何て思うだろうな。ツルツルのココ、趣味で剃ってると思われたりして」
いつもそうだ。晴彦は、秀樹の最大のコンプレックスである
肉体的欠陥・・・あらぬ処の無毛症を事ある事にあげつらう。
ちょっと自分に毛があるからと思って。
いや、ちょっとじゃないけど。
初めて寝た時に、マジマジと見入って「赤ちゃんみてー」と言った時から、
致す時にどれだけ頼んでも電気を消してくれた試しがない。
それどころか、わざと羞恥を煽る言い方をして、
いつ人が来るか分からない危険な所ばかり選んで秀樹を抱く。
変態。毛むくじゃらの、オヤジ入った変態。
そんな変態に感じてる自分も・・・変態。
「ヒッ・・・んん、ぁや・・・っ」
「女達に言ってやりゃーよかったんだよ。ボク剃刀要らずなんデス、って」
「お、お前になんか・・・指にまで毛が生えてる奴になんか俺の気持ちが分かるかっ」
「わっかりませんねーえ。第一、中入ってる時にその指の毛が擦れてキモチイイんでしょ?」
「あ、はっ」
「ばあか、声デカイ。皆酔ってっからいーけど」
晴彦の揶揄に慌てて秀樹が息を飲む。
晴彦はそんな秀樹にワザと声を上げさせる様に弄るのを止めない。
向かい合った膝を股間に当てて揺すり上げ、小柄な体を乗せるようにして。
「毛がないとさあ、赤くなった時にホントに全身染まるんだよな。
余計な遮蔽物ないって感じ?敏感だし」
耳に囁き込まれながら息を吹き掛けられ、声を押さえるだけで精一杯だ。
「そんでも髪の毛とか眉毛とか、顔の毛はあるのな。人体の神秘。
首から下はツルンツルンなのに。鼻毛はあんのか?」
「あ・・・ぁ・・・馬鹿熊・・・っ」
「俺が熊なら秀樹
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